019_BOX AND HUT
DIPLOMA(MA), 2021-2023
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ナンドとコヤ
修了制作
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Awards_
トウキョウ建築コレクション2023 古澤大輔賞
JIA関東甲信越支部大学院修士設計展2023 奨励賞
東京工芸大学大学院修士設計賞
Special Thanks_
Haruki Nagaike, Yoshiyuki Fujiwara, Kabuto Sato
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自身の修了制作である。 断片と統合をテーマに、ナンドとコヤの関係性に関する制作を通して新たな建築空間を提案する。 提案は以下2点を軸に展開する。ひとつ目は、輪郭を規定し事後的に空間を割り当てる、いわばトップダウン式の設計手法に対し、居場所が先行してボトムアップ式に建築が現れるという、設計における決定の手順の転倒の試みであり、もうひとつはSNSへの記録や、タイムラインに現れる私自身の日常的な空間の記録方法から独自の建築論を構築するという2点である。前者は、設計手法論であり、後者は私自身の建築観の提示である。日常感覚の中に埋もれた個人的な建築観を建築設計史の文脈の中に位置付け、独自の建築観を新たな設計論として提出する。
また、本研究は断片と統合の建築史に関する調査分析と、2つの住宅作品とそこに至る3つの試作から構成される。 研究のタイトルは、本論の後半を構成する制作作品のタイトルである。前段では、ルネサンス、モダニズム、現代という3つの時代からそれぞれ建築家をピックアップして断片と統合の建築史を浮かび上がらせる。後段の制作では、東京の中目黒に設定した2つの敷地を舞台に、‘ナンド’と‘コヤ’と名付けた相反する生活の場で巨大な建具を可動させることで、住宅を出現させてみる。これは構造芯と、それに沿う断熱された外壁が閉じることで安全に確保される住宅ではなく、可動物が動的に出現させる現象としての住宅であり、これを居場所が先行するボトムアップ式の設計が生み出す空間として提案する。
本研究で設計した2つのイエは、断片化されたシーンの集合体である。つまり、出会うはずのないものたちが出会うことによる多様な空間の発生が人の活動、さらには都市空間へと伝播してゆくことが可能となる。また、結果として舞台装置的な仕掛けで構築されたイエによって、日々の生活が劇のように街に溶け出していく。これは、敷地内で完結した人の生活像と、第3者がそれを至近距離で目にするという東京の街の特徴に対し、開きつつも閉じるというグラデーショナルな境界を作り出すことにアプローチすることができる。 断片という部分的な具象にフォーカスした後、それらを関係づける統合の流れの元、本研究は設計を通し手法化を試みたが、場当たり的に要素を組み合わせる際の空間的な隙間や齟齬が発生してしまうという課題に対し、建具という静と止というどっちつかずな要素を間に挟むことで、内部か外部かという0か100ではない曖昧なエリアによる建築の成立を実証した。断片という個々でも成立するものを統合した結果、必ずしも全体を作り出すとは限らないという結論に至った。これは一元的な解答ではない、姿のない統合である。
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